2006年4月29日
「甦るか、森」
平成18年4月19,20日
森林・林業・林産業活性化促進議員連盟の
富士山麓の森林管理状況視察


須津渓谷橋で。著者は白い帽子

山々は新緑一色、でもちょっと黒っぽい緑色の群れが・・・あれはヒノキやスギの常緑樹地帯。

昨年12月の県議会定例会で、「もりづくり県民税」の徴収が可決されました。
全体約84000万円の税収になるというものですが、これがいかように使われるのか、森林の再生に関して、私は3月定例会で「静岡県版森づくりについて」として、「もりづくり県民税の具体的な使途について」と「森林支援隊の育成」の二つの質問をし、環境森林部の府川部長より答弁をいただきました。

「もりづくり県民税」を財源とする「森の力再生事業」は、森林の公益的機能の回復を目的に従来の施策では整備が難しい荒廃森林を対象とするもので以下の
5つの条件を満たす森林が対象となるということ。

1)災害の防止や水源の涵養等の公益的機能の発揮が特に重要な森
  林であること

2)林道から離れていたり急峻で整備が困難なこと

3)下草がない又は台風による災害を受け、緊急に整備が必要なこと

4)保安林に指定されていない森林

5)私有林であること

内容は、人工林については、40%程度を列状に伐採、広葉樹の自然発生を促しスギやヒノキと広葉樹が交じり合う混交林をつくる、また、里山林や竹林については、密生した樹木や竹を抜き、竹林を広葉樹林に替えることなどにより、地域の団体による持続的な管理を可能にしていく方向へ。

では、間伐、伐採、などは、実際、どのように行うのか。

静岡県議会には、森林・林業・林産業活性化促進議員連盟(林活議連)という超党派の会があり、
4月19日、20日、愛鷹山系の西麓で平成18年度の視察研修が行われました。

17名の林活議連議員は、環境森林部の井口森林計画室長ほか2名の県職員と共に、富士農林事務所のご案内で、先ず、 富士市 桑崎から比奈に至る森林基幹林道愛鷹線に入りました。

森林基幹林道「愛鷹線」は、県営の林道整備事業で整備された、 富士市 桑崎の国道469号線を起点として、愛鷹山系の西斜面中腹を南北に通過して、 富士市 東部の農道に至る全長20.9km、道路幅5.0mの林道で、木材の搬出や、森林の適正な管理などに利用され、森林・林業の活性化が期待されているということです。

さらに森林基幹林道「愛鷹線」の起点から、西の富士山側に延びている広域基幹林道「富士山麓線」は、県営林道整備事業、高規格林道整備事業で整備された、富士山南斜面の一合目付近を横断する2車線林道で、木材の搬出や、森林の適正な管理のほか林野火災を防止するため、防火林帯や消防水利などを備えた林道。
林道が整備され、人びとが森林と触れ合う機会を多く持つようになることは、大変大切なことですね。
この林道「富士山麓線」には、約20路線の森林管理道及び施業道(せぎょうどう)が接続しているとのこと、さすが、日本一の富士山森林地帯。

須津川(すどがわ)に架かるきれいな橋は「須津渓谷橋」。
   

須津渓谷橋からの大棚滝

この橋は、愛鷹の山々を仰ぎ、駿河湾のなぎを眺望できるところにあります。 広域基幹林道「富士山麓線」と、林道「愛鷹線」は、国道469号線を境に接続しており、それを繋ぐ「須津渓谷橋」は利用区域2841haの林道の中の橋。

全長110m、幅員7、0m、事業費97800万円。ふれあい林道整備愛鷹線橋梁工事で、平成12年着手、2年後に完成。

空中に優美な曲線を描く上路式鉄筋コンクリート固定アーチ橋は、眼下に見える須津川渓谷の清流や「大棚の滝」の清澄さに溶け込み、すっきりと豪快に美しく。 日本人の優れた情緒性が窺われるデザイン。
山々には、ソメイヨシノや富士桜が、ぼんやりとはかなく春らしく、渓谷を彩っています。
この辺り、古くからのキャンプ場やハイキングコースがあるとか、須津渓谷橋は、素晴らしい観光スポットになること必定、伊豆は益々ぼやぼやしてはいられないなと思いました。

次は「富士森林再生プロジェクト」が行われている 富士宮市 の粟倉へ。
地図を見ますと、富士山の頂上に向かって 小山町御殿場市裾野市富士市富士宮市 が三角形にくっついている様な形となっています。

もうこの辺りは森林、森林、森林!

長い脛を見せて整列をしているヒノキ、スギ、スギ、ヒノキ。
富士宮市 の総面積は約3万haで、うち森林面積は約2万ha、森林率64%だそうです。 そのうち、民有林面積は13000ha、人工林は1万haで、人工林率76%。すなわち、戦後一斉に植栽されたヒノキ林が広がっているところのようです。
ここ数年「富士ヒノキ」が脚光を浴びているので、産地化に取り組んでいる地域。私有林の所有者は小規模分散的であること、施業の効率性が低いため、外材との価格競争の面で不利、克森林所有者の不在村化が進んでいるという現状がある。
そこで、小規模所有者を取りまとめ、路網整備を進めながら木材資源利用を促進しようとする取組が、平成16年度から「富士森林再生プロジェクト」として産官学の協働で開始された。 小規模の森林を団地化して、利用間伐と路網の整備を同時に行うというもの。
森林内に安価な作業路を開設、列状間伐の導入などにより高性能林業機械を効率的に稼動させます。


@プロジェクトの立ち上げ
A農林事務所・市町に相談
Bメンバーを募る 
C研修 
D対象地の選定検討会
(出来るところからやっていくという方針で) 
E対象地の調査 
Fプランの策定 
G地元説明会 
H施業の実施・作業路の開設 
I機械で列状間伐 
J作業状況の調査 
K所有者への完了報告 
L生産性の分析


現地まで山中のかなり急な坂道を喘ぎ喘ぎ歩きました。
スギ・ヒノキ6:4、樹齢30年から50年、列状間伐が行われていました。
3残1伐(さんざんいちばつ)。
4本目を伐採、運搬も出来る。
きれいに檜が林立しており、鮮やかな切り口を見せた列状間伐。日の光を浴びて残された3本が育つと、3、4年後、真ん中の1本を伐採、そして同じように、3本目、4本目を伐採すると、新しく植林をするのだという。
富士農林の松波さんの説明に耳を傾け、感心し、さて、優れものの機械のご登場となった。

「すごい!」「すごい!」17名の議員の歓声が上がる。
坂からヒノキの木が引き上げられる。
ヒノキに回されたロープを切る。
グラップルなる機械で引き上げて、プロセッサでシュルシュルと引っ張りスパッと切り落とし、同じ長さに切り落とし、曲がっているところはすぐに切って落とし、またシュルシュル、そして枝葉をバリバリバリと落とし、丸裸に。見とれる私たち。

プロセッサ(切断機)   グラップル

4人1組のお仕事グラップルのオペレーターは妙齢の女性。
この道20年とか。

あっという間に7、8本を片付けトラックに積み上げること15分程度か。これらの優れものの機械はスエーデン製で、動いている高性能林業機械一式で5000万円也。

「富士森林再生プロジェクト」は第1団地は、1,672千円の黒字。
第2団地は、2,018千円の黒字。

これはすごい。

「県内荒廃森林の再生も夢でなし」と、林活議連の17名は、ほっとすると同時になぜか溜飲を下げた思いがいたしました。
林活議連議員、これからも環境の保全に邁進していきます!

須津渓谷橋の下は大棚滝公園になっています。